第5回「忍術と妖術」

「忍術と妖術」要旨

吉丸雄哉

 

忍術は、歴史的に実在した「忍び」のつかう忍術と、小説・芸能などに登場する架空の「忍者」の忍術の二つに分けられる。「忍び」の忍術は、史書の記録や忍術書の内容から判断して、「平時に敵地に侵入して行う偵察・情報収集」と「戦争時の偵察のほか、敵陣・敵城に侵入して行う放火・暗殺」の術だといえる。小説・芸能のなかの忍術も飛加藤や木村常陸介・石川五右衛門の出る仮名草子・浮世草子を読む限り、「忍者が忍術を用いてしのびいり、大事なものを盗んで戻ってくる」ための術である。妖術は現実にはありえない不思議な術であり、近世の小説・芸能では、隠形の術・飛行の術・分身と反魂の術・蝦蟇や鼠などを操ったり変化したりする術として描かれる。忍術は妖術の一つだが、妖術は忍術であるとは限らない。にもかかわらず、大正・昭和にいたるうちに忍術が妖術の代名詞となり、児雷也・仁木弾正・天竺徳兵衛など妖術使いは忍術使いと見なされるようになる。それは、仙人の力・伴天連の妖術といった術の根拠が弱くなったから。印を結ぶ、巻物で術を譲る点が共通するから。妖術をつかって、忍びの活動を行うといった点が理由だと思われる。また、修験道からくる超自然的要素が忍術にあり、それが妖術と似通った印象を与えるためと思われる。

 

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