第1回「伝書に記される忍術」(前期)

「伝書に記される忍術」要旨

山田雄司

 忍術伝書は、本来は忍びにのみ伝えられてきたもので、他見を許されない書である。ゆえに世に知られている伝書は多くない。そのためか、何々の術といったさまざまな術が忍者の術とされているが、忍術書に記載されておらず根拠のないものも多数ある。
 本報告では、未翻刻の史料も紹介しながら、忍びにとって最も中核となる部分、すなわち忍び込みに関する作法について明らかにした。一例を示せば、『用間加條伝目口義』に記すように、忍びは人に付くノミやシラミのように、人の後に付いていって建物に侵入するのを基本とし、それができない場合に堀や塀を越して入ったのであった。塀を越えるときには、刀の下緒を結んで足首に引っかけておき、刀を塀に少し斜めにたてかけ、鐔に足を踏み掛けて、飛び上がって屏の腕木に飛びつけと記されている。そして、高い所から飛び降りるときには、着地時に地面から少し上に飛び上がるようにすれば、音も立てずに無事着地でき、鳶口でも棒でも刀のように差して、一尺ほど余るくらいにして脇の下に抱え込んで飛び、そうしたものがなければ、小尻に金を貼った刀を差して飛ぶのがよいとある。その他の記述に関しても、荒唐無稽な内容が書かれているわけではなく、鍛練によって遂行できる範囲の実用性をもって記述されているのである。

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