人文学部
人文社会科学研究科

研究

第3回「歌舞伎に見る「忍者」」(前期)

「歌舞伎に見る「忍者」」要旨

稲本紀佳

 現代人のイメージする虚像としての忍者と、戦国時代に活躍した実像としての忍びの間には多くの違いがある。この違いはどのようにして生まれたのか。それを知るための足掛かりとして近世に書かれた歌舞伎の台本に登場する忍者に注目した。近世は忍びが活躍したとされる戦国時代の直後の時代のため、歌舞伎に登場する忍者は現代のイメージより実在の忍びに近いと思われる。また、同じ近世でも時代が下るにつれて現代人のイメージする忍者に近づいていくのではないかと考えられるためである。

 調査の結果、初めは宝を盗む忍者や暗殺をする忍者が多く登場していたが、時代が下るにつれて諜報活動をする忍者など、様々な役割を果たす忍者が登場するようになることがわかった。また、妖術や体術だと思われる「忍びの術」を使う忍者も見られるようになった。これは時間の経過による忍者イメージの変遷と言える。その一方で、宝を盗む忍者や暗殺をする忍者は他の役割を果たす忍者が登場してからも変わらず多くの狂言に登場している。このように時間の経過とは関係なく、一貫して見られるイメージもあった。

2016年度第3回忍者・忍術学講座 (12).jpg

動画(部分)

Page top