第1回「徳川幕府の伊賀者について -伊賀者松下家文書の解読-」(前期)

「徳川幕府の伊賀者について―伊賀者松下家文書の解読―」要旨

高尾善希

講演では、拙著『忍者の末裔―江戸城に勤めた伊賀者たち―』の内容に従い、新たにわかった徳川幕府伊賀者の制度史、伊賀者当主たちの人物史などについて解説した。

拙著は、徳川幕府の伊賀者松下家文書の内容を分析したものである。松下家文書は、松下家のご好意のもと、高尾が発掘・整理・分析した。御家人階層の家史料として優秀であることはもちろん、いままで謎に包まれていた伊賀者の実態が判明するものであった。支配地を有している「地方伊賀者」と支配地を有していない「無地方伊賀者」との格式の違いなど、伊賀者の内部に格差があることや、伊賀者の拝領屋敷地の設置経緯など、ほかの史料にはみられない記述が多い。

特に、五代目松下菊蔵(宝永2年[1705]~安永3年[1774])の記した「系譜」という家譜類が、五代目までの経歴を詳しく伝えている。菊蔵は10歳で家督を継ぎ、明屋敷番・西之丸山里番(享保10年[1725]設置、松下家文書で初めて判明)を勤めた。その後、西之丸大奥御広敷御用部屋書役・本丸大奥御広敷御用部屋書役など、江戸城大奥の事務官を経験する。ただし、「御庭御用」という秘密の御用と思われる仕事も御庭番とともに行っており、「忍者の末裔」として特有な仕事を担っていた可能性も指摘することができる。

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