
2020年春の緊急事態に際して
コロナウイルス感染症対策のために授業開始が遅れ、通常の対面授業の代わりに、オンライン授業を行なうことになりました。これは学生のみなさんだけでなく、教職員にとっても初めてのことであり、より良い授業が実施できるように努力しています。感染の広がりを一刻も早く抑えるために、劇的な社会的実験とも呼ぶべき前例のない措置が、日本を含む世界の国々で敢行されており、大学の遠隔授業もその一端であることをご理解ください。
文化と社会について学ぶ意味
人文学部は、人がこれまで長い年月をかけて築いてきた文化と社会について広く考える学部です。新型ウイルスが引き起こした未だかつてない事態は、人類が獲得した科学技術が万全ではないことを明示するとともに、病気や死への恐怖を呼び覚まし、生きる意味や幸せとは何かを考えさせます。また国と国とを隔てる国境の存在を改めて意識させ、政府や自治体の役割、そして日常生活と経済について考え直すことが迫られています。これらの文化と社会についての理解や考察の重要性は、この四半世紀に起きた深刻な天災と事件によって増していたのですが、今回の事態によって決定的になったのではないでしょうか。
今やるべきことは
現代では様々な情報に接することは容易で、ややもすると情報の海の中で溺れそうになります。情報の多くは断片的で刺激的なため、人を疲弊させます。それらを批判し総合的に判断するためには強い心と知性が必要です。それを養うために大学の授業や卒業論文の研究指導があります。また読書と旅行も不可欠ですが、いま旅行は困難ですので、代わりに小説や映画の中で体験するのも悪くありません。本や映画によって、過去現在の世界に存在する他者の声を聞き、様々な人生や社会を知ることができます。時間をかけて得たものは長く心に残り、一生の糧となります。大学生活は二度と来ないそのチャンスです。
人文学部長 藤田 伸也