三重大学人文学部
学部長
国際交流委員会委員長
研究支援委員会委員長
人文学部は、現在、ドイツのハイデルベルク大学、エアランゲン・ニュルンベルク大学、ボーフム大学等から、多くの留学生を受け入れています。そうしたドイツとの大学交流を基礎に、在日ドイツ大使館と連携し、三重大学日独友好記念企画「日独で考える21世紀の社会保障と医療」を企画しました。国際交流の成果をこのような企画として形にすることは、「地域圏大学」としての三重大学の役割のひとつでしょう。
6月6日から6月14日の展示会「図像と記録資料で綴るドイツ社会保障史」の展示内容は、中世以降、絶対王政の時代、産業革命、ビスマルク時代の社会保障関係法の制定を経て今日に至るまでのドイツの社会保障制度の歴史について、それぞれの時代背景を明らかにしながら、豊富な記録資料と的確な解説により明らかにするものです。内容的には、「ドイツ社会保障史」の範囲を超え、「ドイツ社会史」の展示と言ってもよいほど、充実したものとなっています。
我が国とドイツは、ともに、第2次世界大戦の敗戦から立ち直り、現在では、世界でも有数の経済大国としての地位を築いています。社会保障の世界においても、両国ともに「社会保険」システムを基盤とした仕組みを採用しており、年金、医療、介護、失業、労働災害について、個別の社会保険制度が整備されています。最近でも、我が国において2000年にスタートした介護保険制度においては、1994年にスタートしたドイツの介護保険制度から多くの示唆を得ています。
また、両国は、すでに高齢化率が20%を超え、合計特殊出生率(女性が一生の間に産む子どもの数についての指標)も1.4を切る水準にあるなど、世界で最も少子高齢化が進んだ国家であり、今後、増大する社会保障経費をどのような形で調達していくかが最大の政治的懸案の一つになっています。社会保障改革の機運が高まっている点でも共通していると言えるでしょう。
我が国では、今日築かれている社会保障制度について、国民が自ら勝ち取ったものという認識が必ずしも強くありません。だからこそ、今回の展示資料で、ドイツの社会保障制度の変遷の歴史、いかに多くの人々の献身的な努力と犠牲の下で今日の制度が形作られたのかを知っていただくことは、とても意義深いことであると思います。
6月11日の記念シンポジウム「日独で考える21世紀の社会保障と医療」では、政策立案の第一線で活躍する方もお招きして講演していただき、日独の社会保障と医療の現在を比較できたらと考えています。三重大学人文学部および附属大学病院の教員がコメントし、三重大学の研究成果の一端もお示したいと考えています。
是非、一人でも多くの皆さんに足を運んでいただくことを、願っております。