第2回「伝承される忍術」(前期)

「伝承される忍術」要旨

川上仁一

 江戸時代に体系化され、伝承されてきた忍術についての研究は、今まで殆どが秘伝書などの記録にのみ基づいて行なわれてきた。実際の伝承は書物だけでなく、具体的な忍びの方策は、記述が困難な身体の操作を含み、段階的に様々な口伝と共に伝授された。そのため、後世の作為や改変、追加が成されている場合も多く、古老の言、記録への過信は実体を見失う可能性が有り注意を要する。殊に起源伝承や奇異な術技はその最たるものであろうが、由緒や創出の背景等を探究する事は、文化としての忍術を理解するためには必要であり意義がある。

 術技の伝承は基本的には家伝であるが、全てではなく、門人を得て伝授される場合も有った。習熟と理解により、普遍性はないが階梯を設け、易より難に、また奥に至ればより深く効果的な技法、抽象的で深意ある内容を伝えられる事も行なわれた。但し口伝と称しながら、誤伝や遺漏を防ぐためにも、稀ではあるが秘訣を記述した伝書も残されている。忍者が信仰した宗教も種々有ったが、特異な神仏を祀り、忍びの術技の験を得ようとする、飯綱の法や三島人形、魔我津神、暗仏と云った面妖な術も伝承されていた。

 忍術は生活技術より工夫されてきた、総合生存技術とも云える広範な体系であり、実体解明には史学面からだけでは困難である。理化学、民俗、生理・心理学等の多角的な観点からの調査と研究が求められる所以である。

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