人文学部
人文社会科学研究科

研究

第2回「時代劇における忍者像の変遷」(後期)

時代劇における忍者像の変遷」要旨

春日太一

手裏剣、黒い装束、奇想天外な忍術の数々。これらはいずれも実在の忍者は使っておらず、映画や小説などで創作されたものでした。 そこで今回の講演では、忍者のイメージがいかにして創られ、そして変遷していったのか・・・について語らせていだきました。 忍者がエンターテイメントの世界で大きく注目されたのは、1910年前後のこと。 立川文庫という出版社の出す少年向け冒険小説、中でも「真田十勇士」が人気を博します。さらに我が国で最初の映画スターである尾上松之助が「豪傑児雷也」などで見せた変身トリックも喝采を浴び、忍者は奇想天外な術を使って活躍するヒーローとして子供向け作品の中で定着していきます。 それに変化が起きたのは1960年前後のこと。 司馬遼太郎、山田風太郎、村山知義ら戦中派世代の時代小説家が忍者をリアルな個人として描き、大人向けドラマの登場人物になっていきました。 さらに折からのスパイ映画ブームも手伝い、映画でも新たな忍者像が登場、「忍びの者」「十七人の忍者」などで、これまでのようなヒーローではない、職務に忠実な一個人として描かれていきます。 さらに63年の映画「真田風雲録」ではポニーテールに網タイツ姿の女忍者(くノ一)が初登場。まさにこの時期は「忍者革命」と言ってよく、現在に至るイメチェンの基盤が形成されます。 これがさらに発展し、さまざまなイメージが加えられ、忍者は世界中の老若男女に愛されるキャラクターになりました。
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