教員紹介 文化学科 アメリカ研究
薄井 尚樹(うすい・なおき)哲学
現代の英米哲学をベースに、主に次のふたつの問題に取り組んでいます。
(1)他者理解の問題:私たちは本当に相手を理解しているのだろうか。そもそも相手を「本当に」理解するとはどういうことだろうか。
(2)心の生得性の問題:心(のある部分)が生まれつき備わっている、つまり生得的であるとはどういうことだろうか。心に生得的なところやそうでないところがあるとして、そのことは私たちのありかたにどんな意味をもたらすのだろうか。
一見バラバラの問題に思われるかもしれませんが、いずれも突きつめれば、「心を持った他者」という、身近な、でもときにとても不条理な存在を対象とするものです。哲学という学問を通じて、この「どこまでもつきあっていかざるをえないヤッカイな存在」に迫っていきたいと考えています。
江成 幸(えなり・みゆき)社会学
さまざまな民族的・文化的背景の人々が暮らす現代社会について、とくに、国境を越える移民の定住プロセスに関心があります。アメリカ合衆国におけるメキシコ系移民のシティズンシップ(市民権)や、日本の地域社会における多文化共生をテーマに研究しています。
小田 敦子(おだ・あつこ)アメリカ文学
人が生きて行くなかでいだく、時には意識さえされない、さまざまな思いや感情を表現するのが文学です。文学作品を読む体験は、自分の生きている時 間と空間をぐんと広げます。アメリカは現代社会のフロンティアのような国です。『白鯨』や『ハックルベリー・フィンの冒険』のような19世紀の小説にも、 現代に通じる人間の自由や孤独の感覚が表現されています。英語の壁にぶつかりながら、疑問を通して他者と自己とを理解しよとするアメリカ文学研究の方法を 身につければ、結構な基礎体力になると思います。
鈴木 秀憲(すずき・ひでのり)科学史・科学論(特任教員)
科学は人類の歴史においてはごく最近に誕生したものですが、現代におけるわれわれの生活はもはや科学技術なしには成り立たないと言ってよいでしょう。そして、科学技術の影響(恩恵とリスク)は今後ますます増大していくと考えられ、これからの社会を形成していく市民が科学についての一定の「リテラシー」(科学的知識そのものではなく「メタ」科学的知識・思考)を有しておくことは極めて重要なことです。
「科学史・科学論」は、そのようなリテラシーに関係し、科学はどこからきたのか、そもそも科学とはどのような営みなのか、科学技術と社会はどのように関係するのか(すべきなのか)といった問題を扱う複合的な研究領域です。学生の皆さんは、この広範な問題領域に接しながら、それぞれの興味・関心に応じて、科学について考えを深めていただければと思います。
立川 陽仁(たちかわ・あきひと)文化人類学
カナダの北西海岸(太平洋沿岸)に住む先住民族、とくにクワクワカワクゥ(Kwakwaka'wakw、かつてのクワキウトル)という民族集団の 生活を研究しています。このクワクワカワクゥがカナダにおいて現在の政治経済的、かつ文化的地位を築くために、サケ資源が果たしてきた歴史的な意義とその 将来的な変化を探求することに関心があります。
田畠 健太郎(たばた・けんたろう)アメリカ文学
主に20世紀のアメリカで書かれた英語の文学作品、特に小説を中心に研究しています。「小説とは何か」という愚直な問いに、感情移入(エンパシー)に着目することで答えられないかな、と思って研究しています。様々な意味での「他者」との出会いが問題になるアメリカにおいて、感情移入という「他者」理解にはどんな意義があるのか、というようなことも広い視野では考えています。こう書くと、何だかムツカシイ感じがしますが、結局は、どうして私たちは作りもののお話にこんなにも心奪われちゃうんだろう、というナイーブな問いが根本にあるので、文学に限らず映画でもTVドラマでもなんでも、虚構の作品に感動するという経験を大切にしています。
中川 正(なかがわ・ただし)文化地理学
文化地理学は、地表面上の人間の活動すべてを対象としますので、日常生活と学問との間の垣根が低い学問だといえるでしょう。学生の卒業論文作成では、アメリカを対象とした研究を指導していますが、「文化環境論」や教養教育における授業では、日常の中から観察力を養い、何気ない疑問を学問的方法と結びつける方法を教え、グループで問題解決を進める実践をしています。どの職業についても、新しい課題を見つけて、思考を深め、解決していく力を、在学中に身につけていただきたいと願っています。
野田 明(のだ・あきら)アメリカ文学
専門は19世紀の小説ですが、授業ではもう少し幅広く、アメリカ文学のさまざまな作品を読んでいます。「文学」は、英会話のようないわゆる「実用 英語」とは違って、即、試験や海外旅行で使えて便利!というものではありません。でも、原典(教科書の英語より難しくて、難しい分面白い)をじっくり読む という作業を通して、英日双方の言葉に対する感性を磨くことは、長い目で見ればきっと実社会でも役に立ちます。外国語で書かれたフィクションの世界に浸る なんて、学生時代にしかできない贅沢だとも言えますが、その贅沢が、卒業してからの厳しい(?)人生を生きていく上で忘れられない貴重な時間となることを 願っています。
松岡 幹就(まつおか・みきなり)言語学
私たち人間の言語の文法は、しばしば日本語と英語の語順の違いが例として挙げられ、各言語に固有のものだと一般に考えられているようです。しかし、語順とは別に、動詞句や名詞句など、いくつかの語が集まってできる単位は言語間で共通していて、その単位を基盤として、主語と述語、修飾語と被修飾語、代名詞とその先行詞など、どの言語にもある基本的要素が一定の位置関係で現れることがわかっています。日本語と英語のように、地理的、歴史的に異なる言語間でも同じ規則性が見られることから、全ての人間言語の基礎となる文法があるのではないかと考えられています。授業やゼミでは、様々な言語の事例を通して、この仮説の妥当性を追究します。
森脇 由美子(もりわき・ゆみこ)アメリカ史
19世紀のアメリカの歴史を研究しています。いまは19世紀半ばの都市における社会関係や文化に関心を持っています。この時期に生じた移民の大量 流入や工業化などの変化の波は、アメリカの都市の社会を大きく変貌させました。この波をまともに被った都市に暮らす人々、なかでも移民する側ではなくもと からアメリカにいた人々に焦点を当て、彼らがいかなる意識を形成していったのかを捉えたいと考えています。さらに、アメリカ生まれの人々のアイデンティ ティやナショナリズムなどを、階級的な側面も視野に入れつつ分析することを目指しています。
吉田 悦子(よしだ・えつこ)英語学・言語学
コミュニケーションが成り立つとか、成り立たないとかよくいいますが、なぜそうなるのか考えたことがありますか? 私たちは、同じことばが通じれ ば、自分の伝えたいことはとりあえず何でも理解してもらえるだろうと当然のように思っているところがあります。しかし、実際は、広い意味での「コミュニ ケーション」の成立には、ことばそのものよりはむしろ、その伝え方や発話状況が重要な役割を演じていることが多いのです。伝えようとする相手や場所によっ て表現も変化します。普段私たちがなにげなく交わしている対話を中心に、ことばのもつ意味や働きに注目して、コミュニケーションのしくみについて研究して います。