教員紹介 文化学科 ヨーロッパ・地中海研究
赤岩 隆(あかいわ・たかし)イギリス文学
小説研究。イギリス文学及びアフリカ文学。過去の名作がどのように作られたか、作品の背景を辿りながらその謎を解明します。同時に、これから書かれるべき小説の姿について模索し思いを馳せます。
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安倍 里美(あべ・さとみ)哲学・倫理学(特任教員)
メタ倫理学の研究をしています。私たちの行為や態度は、常日頃から様々な評価にさらされています。「効率が悪い」「ユーモラスだ」「無責任だ」「洒落ている」「常軌を逸している」......。しかし、それぞれの評価が述べていることが何であるのかは、本当のところ明確ではありません。たとえば、上の例のうちのいくつかは道徳に関わるものではないかもしれません。ですがそもそも道徳的なものと道徳的でないものの違いは一体何でしょうか。しかも、よくわからないものであるわりに、私たちがこのような評価のすべてを完全に無視して行動を決めるということは無理であるようにも思われます。
丁寧に解きほぐし、整理をしていくことで、道徳に限らず、私たちの行動を導いたり制限したりする規範性全般についてクリアな説明を与えることが研究目標です。
綾野 誠紀(あやの・せいき)言語科学講義
人間には普遍的な言語獲得能力が備わっているかもしれない、という仮説を検証するために多くの言語学者が日夜研究に励んでいます。その研究の面白さ を、講義や演習を通して学生に伝えることが、この人文学部での自分の役割だと思っています。言語学の勉強を通し、人間のことばの本質的な部分を知ること は、英語等の語学教師を目指す方にとって、欠かせない部分です。ただ、将来、言語教育や言語学に関連する職につかなくても、言語学の勉強を積み重ねること によって議論の組み立て方を学べば、様々な場面において応用できると思います。
稲葉 瑛志(いなば・えいじ)ドイツ文学・思想(特任教員)
20世紀のドイツ文学・思想を研究しています。担当授業は「ドイツの文学」や「ドイツ文学演習」などです。「市民時代の終焉の始まり」といわれる第一次世界大戦後のドイツは、政治・社会・文化の領域においてさまざまな革新がためされたと同時に過激な反動がひきおこされた時代でもありました。こうした時代状況をつねに念頭におきながら、急激な近代化がもたらした光と闇を、文学作品・エッセイ・哲学書などで分析しています。とりわけ私の問題関心は、この時代にみられた社会の大衆化や保守主義の急進化、技術崇拝のイデオロギー、黙示録的思想の流行などの重大な問題に当時の作家・思想家たちがどのようにして取り組んだのかということにあります。授業では、彼らの考察したことを通して、当時のドイツとますます近似してきた現代のわたしたちの状況についてみなさんと一緒に考えていきたいと思います。
井口 靖(いのくち・やすし)ドイツ語学
授業は「ドイツの言語」「ドイツ語学演習」や言語学関係の科目を担当しています。人間はどのように世界をとらえ、それをどのように伝達しているのか という点をドイツ語を材料にして考えます。教材として最近のドイツ語の映画や漫画も使っています。研究としては、特に話している人がどんな立場や判断、心 理状態を言語上に表現しているのかということを調べていますので、そのことも授業に取り入れています。難しいことをわかりやすく説明することは得意だと 思っているのですが、案外それが伝わっていないようです。コミュニケーションはやはり難しいと痛感しています。
大熊 富季子(おおくま・ときこ)言語学・第二言語習得
ほとんどの人は母語は問題なく獲得できるのに、外国語の学習となるとなぜ困難になるのでしょうか。また外国語の学習において、なぜ特定の項目は易しい/難しいのでしょうか。私たちが外国語を学習する際に漠然と感じているこれらの疑問に答えるため、第二言語習得研究では、第二言語(/外国語)の知識は何で構成され、それはどのようなメカニズムで獲得・運用されるのか、を解明することを目的にしています。私の研究では、第二言語学習者と母語話者の発話や文の解釈を比較することにより、①学習者は第二言語を使う際にどの程度母語の知識を使用するのか、②第二言語の学習の経過と共に母語の知識は使用されなくなり、学習者は最終的に第二言語の母語話者と同じ知識を持つのかどうか、を調べています。
小嶋 ちひろ(おじま・ちひろ)イギリス演劇
16、17世紀のイギリス演劇を研究しています。
籠 碧(かご・みどり)ドイツ語圏文学(特任教員)
「"正常"とか"普通"ってそもそもどういう状態のこと?」「"異常"に分類されたマイノリティは、特別な才能がないと生きてちゃいけないの?」私たちが日々をやり過ごしていく上でしょっちゅう行き当たるこうした問題は、実は100年前の文学とリンクしています。19世紀後半に精神医学が影響範囲を広げたことを受けて、20世紀初頭、いわゆるモダニズムの時代のドイツ語圏文学には「精神の病」の表象が氾濫しました。当時の作品には、作家たちが「正常/異常」の二分法、さらには病が喚起する「芸術的」「天才的」といったイメージと、様々なやり方で向き合っていた痕跡が残っています。時代も国も違う古典作品は、「今ここ」で起きて我々を苦しめる問題について、(解決策を示すのではなく)少し別の角度から眺めるきっかけを与えてくれます。近頃は「孤独死」の問題を、都市化が進行して死と孤独のモチーフの溢れた当時の文学から考えられないか模索しています。
北川 眞也(きたがわ・しんや)人文地理学(ヨーロッパ・地中海地誌、イタリア地誌)
ヨー ロッパという場所に対しては非常にポジティブなイメージが持たれているかもしれません。それは、このグローバルな近代世界が、ヨーロッパを中心にして形成されてきたからになりません。その過程でヨーロッパは、非ヨーロッパ世界との数々の「出会い」を経験してきました。それは非常に暴力的なものでもあったわけですが、一体どのような出会いだったのでしょうか。また現在では、どのような出会いがありうるのでしょうか。ヨーロッパの外に生きる人たちにも決して無縁ではないこうした問いを、授業ではみなさんと考えていきます。研究では、ヨーロッパの境界地帯でもある地中海地域における人の移動、主にイタリアにおける移民・難民研究を通して、同様の問いを検討しています。
Thierry Guthmann(ティエリー・グットマン)比較文化・フランス語
表面的な相違点に囚われず、各民族・国が見せる文化的な様相の裏に存在する共通の構造・パターンを求めることが私の比較文化の方法です。例えば、宗教の分野であれば、一見全く異なるカトリック教と神道の間に実は構造的な類似点が隠れています。具体的には聖人崇拝の点でカトリック教は神道と同様の多神教的な構造を持っています。しかし、日本人論等の影響を受けてきた戦後の多くの日本人は自らの文化が極めて独特だと思いがちです。その歪んだ自己認識を類似点に焦点を当てた比較文化の方法を通じて正すことが私の授業の主要な目的といえます。なおフランス語の教育に関しては、映画の短い場面の聴解練習等を通じて実用的なフランス語の教育に力を入れています。
菅 利恵(すが・りえ)ドイツ文学
近代化の中で、恋愛や家族、教育といったわたしたちにとって身近な事柄の意味や機能がどのように変化したのか。それとともに個々人のアイデンティティ形成 のあり方がどう変化し、どのような問題が生じることになったのか。これを、ドイツ語圏18世紀、19世紀に書かれた家庭劇やさまざまな劇作品を通して探っ ています。過去の劇作品には、わたしたちの「いま」に続く近代化の流れを読み解くための手がかりが豊富に詰まっています。劇作品を通して近代市民社会の形 成過程を問い直しながら、個々の作品の面白さや現代的な意義を再発見していきたいと思います。
大喜 祐太(だいぎ・ゆうた)ドイツ語学・語用論
外国語を学び進めていくと,一見すると論理的には正しそうでも,実際にはあまり使用されていない表現に出くわすことがあります。よく考えてみれば,みなさんもともだちとの会話の中では,教科書や新聞と同じことば遣いをしていないはずです。時には文法のルールから逸脱した表現を使うこともあるかもしれません。日本語と同じようにドイツ語でも,話す相手や場面によって,地域によって,また個人によっても,ことばの使い方は異なっています。古い語彙が残っていたり,新しい文法が出現したりすることもあります。そのため,言語を理論的に研究する際にも,まず実際に使われていることばを観察することから始めなければなりません。わたしの役目は,みなさんが実際のドイツ語に触れることによって,その言語の全体像に踏み込んでいくのを手助けすることです。
田中 綾乃(たなか・あやの)西洋哲学・倫理学・美学
西洋哲学(倫理学、美学)を担当しています。哲学は、すべての学問の基礎であると言われていますが、とくに私の専門であるカント哲学は、ヨーロッパ の<近代>という時代の基本的な枠組みを形成しました。カントをはじめ先人たちの思想を学ぶことで、世界の真偽を見極めるまなざしやものの見方が養われる と同時に、世界が彩りある美しいものとしてあらわれてきます。これまで常識だと思っていたことが、違う視点で見えてくるのは、新鮮かつ豊かな経験です。ま た、哲学的なものの見方を獲得すると、古典だけでなく、現代が直面するさまざまな諸問題に関しても、多角的な視点から考えられるようになります。西洋思想 に根ざしたキリスト教や西欧の芸術文化を手がかりにしながら、「人間とは何か?」という哲学の根本的な問いを一緒に考えてみませんか。
中嶌 浩貴(なかじま・ひろたか)英語学・認知言語学(特任教員)
英語の意味的側面について研究を行っています。そもそも言葉の意味とは何でしょう?例えば英語のlandとgroundという語。この2つは共通して<(乾いた)地表>を指すものの、実際はlandが<"海に対しての"地(つまり"陸"」)>、groundは<"空に対しての"地(つまり"地面")>と、異なる背景的知識と関連した異なる意味を持つものと理解されます。つまり、言語の意味には言語使用者が事物をどのような背景的知識や解釈に基づいて理解しているかが色濃く反映されているのです。このような意味の考え方に基づき、またコーパスと呼ばれる実際に使用された英語を集積したデータベースを用いることで、リアルな英語の在り様と、その背後に潜む言語を動機づける仕組みの解明を目指しています。どうしてそんな意味になっているのか、みなさんも一緒に言語の意味について考えてみませんか?
野村 耕一(のむら・こういち)ヨーロッパ近現代史
私たちは過去・現在・未来という三つの種類から成る時間の中で生きています。現在は刻々と過去となり、未来は続々と私たちの前に姿を現してきます。 未来を予測することはとても困難です。変化が激しく、その方向も定かではない今の時代に生きる我々の不安の大きな原因はそこにあります。その際私たちが頼 るべきは過去の経験以外にありません。歴史学とは、未来へ踏み出していくために過去を知る学問であると思います。皆さんと共に三重大学人文学部で歴史を学 び、歴史から学びましょう。お待ちしています。
服部 範子(はっとり・のりこ)英語学・音声学
英語の音声のさまざまな面について、日本語の音声と比較しながら研究を進めています。コミュニケーションの手段として音声言語を用いるとき、そもそも言語音はどうやって発せられるのか、授業ではソフトウエアを用いた音声の可視化(見える化)を取り入れて言語音の産出と知覚について学んでいます。またリズム類型論という視点から、ことばと音楽の関係についても考察を進めています。
村上 直樹(むらかみ・なおき)ヨーロッパ・地中海の社会、同民族と文化
私の担当講義は、「ヨーロッパ・地中海の民族と文化」と「ヨーロッパ・地中海の社会」です。「民族と文化」では、人類学的観点からヨーロッパ・地中 海地域における祝祭、民話、魔女裁判、奇蹟、夢解釈、聖母出現、民俗宗教などをテーマとして取り上げます。「社会」では、社会学的観点から同地域における 家族のあり方、階層構造、地域民族問題、移民労働者問題などをテーマとして取り上げます。どのテーマも興味深く、学べば学ぶほどヨーロッパに関する理解が 深まると思います。また、日本の社会や文化を考え直すきっかけにもなるでしょう。
山本 覚(やまもと・さとる)フランス文学
事実でないことは全部嘘でしょうか。現実には存在しないことを美しい言葉で綴った文学は狂言綺語でしょうか。人間の真実は必ずしも事実と同一ではな い、モノとコトの現実よりもっと真である世界がある、とお思いでしたら、あなたは文学と無縁ではありません。ある批評家の書いたものを読んで、あ、僕が言 いたいことと同じ事を言っている、と思ったことがあるならば、また、ある作家の作品を読んで、何だ、私のことが書いてある、と感じたことがあるならば、あ なたの研究はそこから始まるかもしれません。そしてその批評家や作家がフランス語でものを書く人だったならば、あなたのお手伝いをさせていただくことがで きます。