教員紹介 文化学科 ヨーロッパ・地中海研究
赤岩 隆(あかいわ・たかし)イギリス文学(特任教員)
小説研究。イギリス文学及びアフリカ文学。過去の名作がどのように作られたか、作品の背景を辿りながらその謎を解明します。同時に、これから書かれるべき小説の姿について模索し思いを馳せます。
綾野 誠紀(あやの・せいき)言語科学講義
人間には普遍的な言語獲得能力が備わっているかもしれない、という仮説を検証するために多くの言語学者が日夜研究に励んでいます。その研究の面白さ を、講義や演習を通して学生に伝えることが、この人文学部での自分の役割だと思っています。言語学の勉強を通し、人間のことばの本質的な部分を知ること は、英語等の語学教師を目指す方にとって、欠かせない部分です。ただ、将来、言語教育や言語学に関連する職につかなくても、言語学の勉強を積み重ねること によって議論の組み立て方を学べば、様々な場面において応用できると思います。
稲葉 瑛志(いなば・えいじ)ドイツの文学・思想
「ドイツ文学論」「文学概論」「ドイツ文学演習」などの授業を担当しております。専門はドイツの文学・思想です。私が研究している20世紀初頭のヴァイマル期ドイツでは第一次世界大戦の後遺症をひきずりながらも、一方では政治・社会・文化の領域においてさまざまな革新が試され、他方では過激な反動がひきおこされていました。私は、この時代状況において急激な近代化がもたらした「光と闇」を、文学作品・エッセイ・思想書などを横断的に用いて考察しています。黙示録的思想の流行や保守主義の急進化、技術崇拝、大衆化を背景にしたカリスマの登場などの問題を当時の作家や思想家はどのように考えていたのでしょうか。これらは、当時のドイツにますます近似してきた現代社会を生きる私たちに突きつけられた問題でもあります。みなさんと「昔の」文学・思想書を読みながら、「今の」問題についてあれこれ考えることを楽しみにしております。
伊野 連(いの れん)哲学・倫理学・美学(特任教員)
倫理学・生命倫理学を担当します。主な研究テーマは、形而上学、規範倫理学、生命倫理学(先進医療の倫理、死生学)、科学哲学・倫理学、芸術哲学です。例えば死生学では、正岡子規や森鷗外といった文豪や、戸塚洋二(癌で惜しまれつつ世を去った世界的な宇宙線物理学者)らといった科学者について論じてきました。主な著書に『ドイツ近代哲学における藝術の形而上学』、『生命の倫理 入門篇』、『現代美学の射程』などがあります。芸術は研究テーマでもあり、評論活動の対象でもあり、個人的な趣味でもあります。また、この秋(2021年)の着任と時期が重なったため、名古屋御園座の坂東玉三郎特別公演(壇浦兜軍記 阿古屋)を観てきました。
小嶋 ちひろ(おじま・ちひろ)イギリス演劇
16、17世紀のイギリス演劇を研究しています。
北川 眞也(きたがわ・しんや)人文地理学(ヨーロッパ・地中海地誌、イタリア地誌)
ヨー ロッパという場所に対しては非常にポジティブなイメージが持たれているかもしれません。それは、このグローバルな近代世界が、ヨーロッパを中心にして形成されてきたからになりません。その過程でヨーロッパは、非ヨーロッパ世界との数々の「出会い」を経験してきました。それは非常に暴力的なものでもあったわけですが、一体どのような出会いだったのでしょうか。また現在では、どのような出会いがありうるのでしょうか。ヨーロッパの外に生きる人たちにも決して無縁ではないこうした問いを、授業ではみなさんと考えていきます。研究では、ヨーロッパの境界地帯でもある地中海地域における人の移動、主にイタリアにおける移民・難民研究を通して、同様の問いを検討しています。
Thierry Guthmann(ティエリー・グットマン)比較文化・フランス語
表面的な相違点に囚われず、各民族・国が見せる文化的な様相の裏に存在する共通の構造・パターンを求めることが私の比較文化の方法です。例えば、宗教の分野であれば、一見全く異なるカトリック教と神道の間に実は構造的な類似点が隠れています。具体的には聖人崇拝の点でカトリック教は神道と同様の多神教的な構造を持っています。しかし、日本人論等の影響を受けてきた戦後の多くの日本人は自らの文化が極めて独特だと思いがちです。その歪んだ自己認識を類似点に焦点を当てた比較文化の方法を通じて正すことが私の授業の主要な目的といえます。なおフランス語の教育に関しては、映画の短い場面の聴解練習等を通じて実用的なフランス語の教育に力を入れています。
高橋 美穂(たかはし・みほ)ドイツ語学
専門はドイツ語学、理論言語学です。これまで一貫して、構文と動詞の語彙的意味との対応関係をテーマに研究を行ってきました。とりわけドイツ語の「移動」を表す動詞(例えば「泳ぐ」「走る」「落ちる」など)を対象に、結果構文や自由与格構文、統語的使役構文など、様々な興味深い構文を取り上げてきました。ドイツ語の文法研究と聞くと、難しい印象を持つかもしれません。しかし、ドイツ語を学んでみると、「なぜこういう表現をするのだろうか」という疑問を持つことがあるはずです。そうした疑問を丁寧に掘り下げていけば、卒業論文のテーマになります。自分なりに「ことばの法則」を発見したときの喜びを、みなさんと共有したいと思います。
田中 綾乃(たなか・あやの)西洋哲学・倫理学・美学
西洋哲学(倫理学、美学)を担当しています。哲学は、すべての学問の基礎であると言われていますが、とくに私の専門であるカント哲学は、ヨーロッパ の<近代>という時代の基本的な枠組みを形成しました。カントをはじめ先人たちの思想を学ぶことで、世界の真偽を見極めるまなざしやものの見方が養われる と同時に、世界が彩りある美しいものとしてあらわれてきます。これまで常識だと思っていたことが、違う視点で見えてくるのは、新鮮かつ豊かな経験です。ま た、哲学的なものの見方を獲得すると、古典だけでなく、現代が直面するさまざまな諸問題に関しても、多角的な視点から考えられるようになります。西洋思想 に根ざしたキリスト教や西欧の芸術文化を手がかりにしながら、「人間とは何か?」という哲学の根本的な問いを一緒に考えてみませんか。
徳永 和博(とくなが・かずひろ)言語学・英語学(特任教員)
英語の語法・文法を研究しています。特に,どのような機能や目的を念頭に置いて表現が使われているのかに関心があります。例えば, John bought the book, as Mary did. という文の as Mary did では, as did Mary というふうに語順が変わることがあります。なぜわざわざ did と Mary の語順を変えたのかや,どのような意図があるのかなど調べるのが私の研究です。これに加えて,言語学で提案された理論を一般の方々に広めていくような書誌検索システムの構築も進めています。
永富 央章(ながとみ・ひろあき)言語学・音韻論(特任教員)
日常生活の中で、他言語から借用したり、既存の語を組み合わせたりして、私たちはこれまでに見たことのない新たな語を作り、使用しています。そうした外来語や新語の、構造や発音、特にアクセントがどのように決まるのかに興味があります。たとえば「三重大」と英語の接尾辞 "-ism" を組み合わせて「ミエダイズム」という語を作ったとしましょう。これは多くの人にとって初めて目にする語だと思いますが、ほとんどの人が「アカデミズム」や「ジャーナリズム」と同じアクセントで発音するのではないでしょうか。しかし、「ミエダイガク」という語を考えてみると、文字の数は同じはずなのに、アクセントの位置が違います。なぜでしょうか?こうした疑問について日々考え、研究を行っています。
野村 耕一(のむら・こういち)ヨーロッパ近現代史
私たちは過去・現在・未来という三つの種類から成る時間の中で生きています。現在は刻々と過去となり、未来は続々と私たちの前に姿を現してきます。 未来を予測することはとても困難です。変化が激しく、その方向も定かではない今の時代に生きる我々の不安の大きな原因はそこにあります。その際私たちが頼 るべきは過去の経験以外にありません。歴史学とは、未来へ踏み出していくために過去を知る学問であると思います。皆さんと共に三重大学人文学部で歴史を学び、歴史から学びましょう。お待ちしています。
畠中 茉莉子(はたなか・まりこ)理論社会学・社会学説史
私たちが生きていくうえで関わらざるをえない「社会」とはなんでしょうか。友人、家族、職場、もっと大きく見れば、地元の人たち、日本社会、あるいは世界中にいる誰か、何かもまた、自分と関わる「社会」の一部なのでしょうか。私が研究している理論社会学は、こうした一見捉えどころのない「社会」はどのような言葉で描くことができるのかを考える分野です。「ヨーロッパ・地中海の社会」、「ヨーロッパ・地中海の民族と文化」等の科目では、一定の共通性を持ちつつも多種多様な民族・文化と向き合ってきたこれらの地域の魅力をご紹介すると共に、この地域の社会が抱えてきた様々な問題や葛藤についても皆さんと一緒に考えたいと思います。
林 英哉(はやし・ひでや)近現代ドイツ文学(特任教員)
18~19世紀の詩人ヘルダーリンを中心に、近現代のドイツ文学を研究しています。ヘルダーリンは当時の哲学潮流の一つであるドイツ観念論と関係が深く、彼が「根源的統一性」や「存在」、「出来事」といった哲学的テーマを文学テクストでどのように扱っているのかについて考えてきました。また、現在は「文学と障害」も研究テーマとしており、例えばナチス・ドイツの障害者安楽死政策「T4作戦」を扱った文学などに取り組んでいます。社会的に弱い立場にある人々を排除しない社会づくりに、文学がどのように寄与できるかについて考えています。
山崎 祐人(やまざき・ゆうと)ドイツ語学・言語学(特任教員)
私は言語学者で、主に意味論および語用論の観点からドイツ語の分裂文(いわゆる強調構文)を研究対象にしています。言語学は「ことば」について考える学問です。例えば日本語、英語、ドイツ語はそれぞれ異なる別の「言語」ですが、「ことば」という点では同じ。人文学で育まれる言葉に対する理解は、当たり前のように存在するものに対する洞察力に繋がります。一見取るに足らないように思えるものもよくよく目を凝らしてみれば、思わぬ世界に通ずる扉であったり、様々な切り口で旨味が出る果実であったりします。ヨーロッパ・地中海研究コースで、小さな観察から大きな物語へ繋がる学びを一緒に体験していきましょう。