人文学部
人文社会科学研究科

研究

第3回「江戸時代の伊賀者- 一揆探索の隠密御用-」(前期)

江戸時代の伊賀者-一揆探索の隠密御用-」要旨

深谷克己

18世紀末寛政年間に津藩の伊勢領で大きな百姓一揆が起こりましたが、その際に同藩の伊賀領側への波及を防ぐために上野から国境に治安の人数が派遣されました。「伊賀者」も命令を受けて平松や上野の旅籠などに詰め、情報活動に従事しましたが、その中の沢村甚三郎が、彼らの活動を「御蜜用相勤候扣」という記録に残しました。これは探索記録ですが、有事の際の指揮系統、改革政策と領民の不満や批判、一揆行動に向かっていく百姓世界の記録でもあり、18世紀末の政治・社会の表と裏をうかがう格好の史料でもあります。

講演では、この記録の全文をコピーしてフロアに配り、90分間の前半では興味が持たれる問題点をいくつか取り出して私見を述べ、後半では「御蜜用相勤候扣」の各所を読みながら藩政と村々の動向を理解することに努めました。終わりの10分間は、この時期の藩世界の「政治文化」について広い観点からまとめ、フロアからも自由に疑問点をうかがいました。

講演前半で取り上げた一番大きな問題点は、この伊賀者の記録をどう理解すればよいかということでしたが、私はこれを、沢村甚三郎の功業を伝えるための「家乗」(家記)と見て、その理由をいくつかあげました。また、この記録に出てくる伊賀者の名を漏らさずあげ、想定される指揮関係にも触れました。また細かに記されている活動経費(貨幣・人馬)も取り上げました。講演後半では、配布した記録全文を講読する形で、藩の政策と領民の反応、一揆が形成されていく具体的な百姓世界の村・人の関係を解説しました。

2018年度第3回忍者・忍術学講座 (2).JPG

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