研究
第4回「観光と忍者史跡をどう結ぶか-五右衛門塚を事例として-」(後期)
「観光と忍者史跡をどう結ぶか-五右衛門塚を事例として-」要旨
三橋源一
地域創生の切り札として観光が急激に拡大した結果、オーバーツーリズム(観光過剰)が発生した。伊賀・甲賀においても20017年日本遺産に登録され、地域内に散在する史跡の観光化がすすめられたが、その過程において阿山石川区の五右衛門塚でも観光公害が起きた。原因は外部の訪問者と忍者史跡所有者の認識のギャップにある。観光に先立って史跡所有者の課題・要望への理解・援助が必要不可欠である。今回の事例では所有者・訪問者ともに「史跡への山道整備」「史跡に関係する情報提供」が課題となった。そしてその課題解決・調整にあたったのが今回の報告者であり、石川区への移住者である。忍者史跡を所有する地域との信頼醸成、山道を整備する事務的技能・能力の保有等については近隣に住む者がふさわしく、その点、地域内外の価値観を共有する移住者は地域と観光を取り持つ調整者に適している。また観光のあり方が「物見遊山からストーリー体験型へ」シフトしつつある現在、忍者史跡所有者と史料等を共有して学術的に調査して、その結果を共有する役割として、三重大学「忍者学」「地域イノベーション学」が果たす役割は潜在的に大きいと思われる。