人文学部
人文社会科学研究科

研究

第3回「"忍者の通信手段?" -「炙り出し」への現代科学的アプローチ-」(後期)

"忍者の通信手段?"-「炙り出し」への現代科学的アプローチ-」要旨

加藤 進

烽火と並んで過去に使用されたと思われる炙り出しについて科学的な切り口、①あぶり出しインクの特性、②あぶり出し温度(黒化温度)、③洋紙、半紙と和紙の差異、④あぶり出しの仕組まれた文書、⑤あぶり出しの保存性や弱点について検討した。その結果、弱酸性~アルカリ性、糖度が高く、K濃度やSO4濃度が高い、有機物濃度(TOC)が高い特性を数種持っているインクから良好なあぶり出しを得た。研究中に硫安(肥料、(NH4)2SO4)から極めて良好な結果を得ることができた。放射温度計と熱電対による黒化温度測定より、インクの存在によって周囲よりも黒化温度が50~100C低下することがわかった。あぶり出し部分と白紙部分の境界の面分析(SEM-EDX)から無機成分ではS(イオウ)あるいはK(カリウム)の寄与が大きいように思われた。文字の大きさによる判読の考察から、炙り出しは手紙の余白に仕込まれた可能性を指摘した。あぶり出しの保存期間は30日以上であり(これは江戸と京都を普通の人が歩くに十分な時間)、水分にさらされると不明瞭になることが分かった。また、現代版のあぶり出しとして、塩化コバルト(CoCl2・6H2O)を使ったカラーあぶり出しも紹介した。

kato.jpg

動画

Page top