人文学部
人文社会科学研究科

研究

第5回「ここまでわかった忍者の文学史」(前期)

ここまでわかった忍者の文学史」要旨

吉丸雄哉


 2020・2021年には戦国の忍者研究が大きく進展し、平山優『戦国の忍び』(2020・9)、岩田明広「戦国の忍びを追う」(『埼玉県立史跡の博物館紀要』14号、2021・3)、和田裕弘『天正伊賀の乱』(2021・5)といった優れた論考が登場した。戦国研究の専門家によるこれらの論考は一次史料や信頼性の高い二次史料のみをつかって考察する態度をとっているのが特徴である。軍記・軍談・武辺話といった戦国の記録はかならずしも事実を伝えているとは限らない。今まで忍者研究において事実だと認定されていた多くの二次史料が軍記(物語・小説)という扱いをされて、厳しい目で検討されるようになった。これに従って文学が扱う忍者の対象が広くなった。講演では『太平記評判秘伝理尽鈔』から『太平記』に描かれない楠木正成・恩地左近を紹介し、風魔小太郎が軍記や随筆で認識されていたことを紹介した。また、真田幸村が難波戦記物の実録体小説で大いに活躍したことや、真田十勇士というくくりは立川文庫よりあとの大正期に登場したことを説明した。『太平記評判秘伝理尽鈔』にもとづいて認識されていた楠木正成像、『北条五代記』といった近世軍記で具体的に認識されていた風魔小太郎、難波戦記物などにもとづいて認識されていた真田幸村像、そして楠木正成や真田幸村が駆使する忍者。これらは創作といってよいが、それが世間に広く受け入れられていたことも重視すべきだろう。

吉丸サムネイル.jpg

動画

Page top