人文学部
人文社会科学研究科

研究

第5回「山田風太郎と『風太郎忍法帖』-反近代のヒロイズム-」(後期)

「山田風太郎と『風太郎忍法帖』-反近代のヒロイズム-」要旨

谷口 基

 長短百篇以上の忍法・忍者小説から構成された「風太郎忍法帖」は、奇想をもって試みられた小説表現の一大実験場であるばかりではなく、歴史の断層に埋もれた〈無名の死〉をフィクションの空間に蘇らせ、正史に対する叛骨の視点を読者の胸裡に呼び起こす、戦後日本文学に冠たる傑作群である。「風太郎忍法帖」の諸作品に登場する忍者たちは、現代の忍者研究の観点からみるならば、必ずしも現実的に造形されているとは言い難いかも知れない。しかし、彼らが担わされた象徴性には、〈不戦の戦中派〉を生涯名乗り続けた山田風太郎の祈りを透かし見ることができるのだ。権力への盲従を潔しとせず、移ろいやすい正義やモラルを拒絶し、普遍の精神性に殉ずる‥‥そうした、ある意味〈反近代〉的なヒーローたる忍者たちの活躍を、「甲賀忍法帖」、「海鳴り忍法帖」、「春夢兵」の三作品を中心に紹介する。

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