人文学部
人文社会科学研究科

研究

第6回「忍術書・兵学書にみる暗号」(後期)

忍術書・兵学書にみる暗号」要旨

吉丸雄哉

日本の兵学書・忍術書には中国兵法書『六韜』由来の陰符・陰書への言及が多々あり、これらが広く伝わっていたことがわかる。だが、単純なコード暗号である陰符や手紙を分割して伝える陰書は暗号強度が低く、不十分だと思われていた。代わりに用いられたのが「縦横の座標の示す文字をランダムに入れ替えられる、座標を使った換字表をつかう暗号」すなわち「座標型の換字式暗号」である。これは17世紀前半の兵学書に「字変四十八」「七仏の事」「七字の仮名」といった名称で漠然と伝わっていたが、山本尚勝『古今軍林一徳鈔』(1656刊)が暗号鍵・暗号文・平文のすべてを掲出して具体的に解説したことでその実態が明らかになった。「座標型の換字式暗号」はその後『当流奪口忍之巻註』(1657以降成)や『万川集海』などにも取り入れられ、また西南戦争や日清戦争にも利用された日本暗号の精華であった。なお、神代文字を忍者の暗号と見なす説があるが、神代文字は刊本で知られているものなので暗号に使うには不適当であり、また兵学書に見られるものは神の言葉を古い文字で記したという扱いである。よって、神代文字は忍者の暗号ではないということも注意しておきたい。

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