人文学部
人文社会科学研究科

研究

第1回「忍者学と山鹿流兵学思想」(前期)

忍者学と山鹿流兵学思想」要旨

中嶋英介

 本発表は山鹿素行著『武教全書』の注釈書から「忍」の教訓を分析したものである。『武教全書』「斥候」篇の項目「忍」・「物見」にて、素行の孫津軽政方『武教全書家伝秘抄』は素行青年時の著作『兵法神武雄備集』を引用し「忍」を敵陣へ往来する偵察者とした。また窪田清音『武教全書義解』は物見武者と「忍」を区別し、前者が外部情勢の偵察隊、「忍」は敵軍が秘匿とする城内まで侵入する役が課されたとする。同著『武教全書正解』には敵将の飼う犬猫にも心を配り『孫子』の七計が盛り込まれるなど、教訓がより具体化された。

 また『武教全書』用間篇によれば注釈の差はあれども、間者は主君の恩を受けた譜代であるべきとし、主君も仁義を備えた間者登用が是とされた。間者は職分上戦功を内密にするため他の侍の名誉意識とは一線を画し、身分上の位置づけが議論にもなった。政方は古の名臣が間者になった例を取り上げ、多様な「武士」が間者にあたるとして身分の規定はしない。

 『武教全書』上の「忍」を含めた間者の定義は一辺倒ではなく、物見武者と区別されていた。我々はイメージにこだわらず、近世兵学書の知見から「忍」の教訓を幅広く取り上げねばなるまい。

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