人文学部
人文社会科学研究科

研究

第2回「真田宝物館所蔵忍術書について」(前期)

真田宝物館所蔵忍術書について」要旨

山田雄司

 真田宝物館所蔵忍術書は、第8代松代藩主真田幸貫のときに、江戸の兵法家窪田清音との関係からもたらされたものだと考えられる。幸貫は文武学校を創設したり、佐久間象山を登用したりするなど、海防の必要性を考え、武道を重視していた。 そうしたときに窪田清音所蔵の兵法書と一緒に忍術書も書写されて松代藩に伝えられたようである。
 忍術書の中に『万川集海』巻8陽忍上・巻10陽忍下が所蔵されていることが注目される。この『万川集海』は原『万川集海』の写本と考えられ、項目等が列挙される形式である。また、流布している『万川集海』で「穴丑」と書かれて意味が不明な箇所が、「穴忍」と書かれているなど、古態をとどめている。末尾に「伊州阿拝郡隠士 藤林保高述」とあることから、藤林保高のときにまとめられたことがわかる。そして流布している『万川集海』は、子の冨治林保道によって増補されたものである。こうした経緯は「冨治林家由緒書」でも裏づけられる。
 この形式の『万川集海』は、これまで伊賀流忍者博物館所蔵巻子本しか発見されていないが、表記のあり方から伊賀流忍者博物館本よりもさらに原『万川集海』に近いことがわかる貴重な写本である。

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