人文学部
人文社会科学研究科

研究

第3回「『軍法間林清陽』の発見と考察」(前期)

「『軍法間林清陽』の発見と考察」要旨

福島嵩仁

『間林清陽』とは、『万川集海』の原典とされる忍術書であり、2021年12月に甲賀市甲南町葛木の神社から中巻のみが発見された。本講は『間林清陽』に記された忍術の具体的な中身を見ていくことで、『間林清陽』とはどのような忍術書であるかを考察するものである。

『万川集海』と比較すると、陽忍の忍術が圧倒的に少なく、陰忍の忍術が多く記されていることが特徴的である。これは、江戸期の兵学思想が盛んになる前の比較的古い時代に成立した忍術書であろうと思われる。またその中には、他の忍術書には見られない戦闘術の類が多く掲載されており、かつ、複数人での戦闘や潜入、偵察を想定した忍術や武術が取り上げられていた。「軍法」の題目どおり、個別の忍者の技術だけでなく、軍の一員としての忍びの役割にかかる技術が記載されていると考えてよいであろう。その他、忍術書には滅多に出てこない隠し武器や防具などが言及されており、非常に珍しい。

『万川集海』では『間林清陽』と全く同じ記述が見られないが、「古法ニ...」と古い忍術として紹介している例があり、冨治林は『間林清陽』の忍術を古い忍術と認識していたのであろう。他の資料を見るに、『間林清陽』はおそらく伊賀で発生したものであると思われる。伊賀で別の巻が発見され、公開されることで研究が進展することを願いたい。

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