人文学部
人文社会科学研究科

研究

第1回「中世の戦(いくさ)の裏方たち」(後期)

中世の戦(いくさ)の裏方たち」要旨

久水俊和

 中世の戦(いくさ)は、武士道に則った騎馬武者たちの激突によるスペクタクルなのか?
 かつての大型時代劇では、バブル期の潤沢な予算にモノをいわせて、大草原にて、騎馬隊同士がぶつかり合う壮大な時代絵巻をスクリーンに映してきた。しかし、その実態は、逆茂木や垣楯などの交通遮断施設を積極的に設置し、敵を狭きに追いやり、逐一弓矢によって撃退する、地道な"作業ゲーム"だった。
 その際、重要となるのが、敵の侵入路に深い堀を掘り、大木を切り逆茂木として戦場に設置し、盾を背負い前線にてうずくまる、いわゆる"工兵隊"であった。攻める方も、相手が掘った堀を埋め、すばやく逆茂木を除去し、本隊の突入を補助する"工兵隊"の作業能力が勝負を分ける。まさに彼ら工兵こそ、戦の主役なのである。
 また、きらびやかな騎馬武者の対極にいる、粗末な胴丸をまとった足軽たち。彼らのほとんどはいわゆる傭兵で、戦が終わると用無しとなり、市中でゴロツキなどに転じる。しかし、もはや傭兵なくして戦は成り立たない。こうした戦の裏方たちの一つとして、忍者という特殊な職業が誕生したのかもしれない。

久水サムネイル.jpg動画

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