研究
第5回「『奥』政治と忍者」(前期)
「『奥』政治と忍者」要旨
高尾善希
この講座では、主君自身と彼を補佐する人びとの政治エリア「奥」と、老中(家老)・奉行以下諸役人の人びとの政治エリア「表」との対比を通じて、前者「奥」に仕えた忍者たちの政治的位置づけについて解説した。まず、「奥」は現代でいう官房的な役割を負い、主君の秘書的エリアであるため、改革を断行しやすく、組織に柔軟性をもたせる役割を負っていた。また、外からは窺い知ることができにくく、忍術書では、「奥」の様子を偵察する術が記されることが多い。そして、「奥」には、情報探索等の任務を通じて、忍者が出入りすることがあり、そこに、忍者の政治的特殊性を見出すことができる。一方で、軍学書や実際の諸藩の陣立図複数を検討するに(「武教全書」・川越藩陣立図・膳所藩陣立図・鳥取藩陣立図など)、忍者が君側に侍る様子が描かれている。つまり、忍者が君側に侍る性格は、この軍制の位置づけにも同様に、みることができるのである。そもそも、この軍制の位置づけから、「奥」政治と忍者の特殊な関係が生まれたと考えられるが、その具体的な形成過程は、よくわからないので、今後の課題としたい。